新型コロナウイルス

前回に引き続き、コロナウイルスに関してお話ししていきます。

 

私たちの生活環境の中には、細菌やウイルスなど病気を引き起こす様々な病原体が存在し、共存しています。私たちの体には一度入ってきた病原体が再び体内に侵入しても病気にならないように、または重症化しないように病原体を記憶し病原体と戦う準備をする免疫という機能が備わっています。

この仕組みを利用したのがワクチンです。

 

<mRNAワクチンについて>

mRNAとはメッセンジャーRNAと読みます。DNAまたはRNAからコピーした遺伝情報に従い、様々なタンパク質の合成を促す物質です。そのタンパク質の一つに、ウイルスの表面に出ている突起のスパイクタンパク質があります。スパイクタンパク質はそれぞれのウイルスを認識する顔のような存在です。

mRNAワクチンは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の設計図となるmRNAを脂質の膜で包み、投与を行います。人工的に作り出したmRNAを投与することで、体内でスパイクタンパク質を産生させ、それを受けて抗体が作られるようになります。

 

<治療薬について>

レムデシビル

ウイルスの複製に関するRNAポリメラーゼという酵素を阻害することで、ウイルスの増殖を抑制する効果がある薬です。

対象者は、ECMO装置などの重症患者に限定されていましたが、中等症状患者へも投与が可能となりました。投与期間の基本は5日間であり、最大でも10日間までとされています。レムデシビルを投与することにより回復が早まるといった効果がある一方で多臓器不全や敗血症、急性腎障害などの症状が出ることも報告されています。

デキサメタゾン

炎症を抑える働きを持つものの、ウイルスを攻撃する作用はないため、感染症による炎症から肺などを守ることが目的とされています。

初回の服用から10日間にわたり継続して服用することが必要とされています。

 

バリシチニブ

体内で炎症を引き起こす要因となる物質のサイトカインによる刺激を細胞内に伝える際に必要な酵素です。この酵素を抑えることによってサイトカインストームを抑える効果が期待されています。

酸素吸入、人工呼吸器管理、ECMO装置の導入を要する中等症患者及び重症患者で、入院下での投与が行われます。総投与期間は14日間までとされています。レムデシビルと併用することでレムデシビル単独療法と比べ回復までの期間が短縮することなどが確認されました。

 

抗体カクテル療法

体内に抗体を点滴注入することで新型コロナウイルスが増殖するのを防ぎ、重症化を予防するための治療法です。現在は皮下注射もあります。

抗体がウイルスの表面にあるタンパク質に結合し、人の細胞に侵入するのを防ぎます。中和抗体薬とも呼ばれ、新型コロナウイルスから回復した人の抗体を利用するなどして作った2種類の中和抗体を混ぜ合わせた点滴薬を利用します。

発症初期(7日以内)で、50歳以上や基礎疾患があるなど、重症化リスクが高いと考えられる軽症・中等症患者向けとなっていましたが、現在は往診でも仕様が認められています。患者家族や濃厚接触者や無症状感染者に対して重症化リスクがあることを条件に発生予防目的で投与できるようになりました。

 

ソトロビマブ

ウイルスから細胞を守る抗体薬であり、点滴投与されます。抗体カクテル療法と作用機序は同じであり、違いとしては投与される抗体が2種類ではなく、1種類である点です。さらに、ソトロビマブは変異を起こしにくい受容体結合部分に作用するため、今後新たな変異ウイルスにも効果的と期待されています。

対象は、酸素投与が必要ない軽症や中等症で、肥満や糖尿病などの重症化リスクが高い患者です。

 

今回はワクチン接種や治療薬に関して、お話ししてきました。

約2年にわたり、ワクチン接種や治療薬が登場したことで少しずつ現状が変わってきたと思います。しかし、ウイルスは変化するものですのでいつまた新しい変異株ができてもおかしくないのも現状です。これに対し、私たちができることの基本は手洗いうがい、マスクの着用。しっかりとした栄養補給に睡眠です。一個人でできる対策で自分の身を守りましょう!!!



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